私たちの見解
民間企業への丸投げによる大阪府の
府民共同発電補助事業の廃止に断固反対する
2019年3月26日
原発ゼロの会・大阪
原発ゼロの会・大阪(正式名称=原発をなくし、自然エネルギーを推進する大阪連絡会)は、大阪府の「府民共同発電補助事業」制度の廃止に対し、以下のような見解を表明します。
この事業は、大阪府の「おおさかエネルギー地産地消推進プラン」で掲げられている再生可能エネルギーを推進する取り組みの一つで、平成28年度(2016年)から始まった補助金事業です。その主な内容は以下のようになっています。
●補助対象 NPOや市民団体など公益を目的とした活動等をする団体(件数は2件/年)
●対象施設 公益的施設(学校、幼稚園、保育所、社会福祉施設など)のうち補助対象団体が管理するものを除く。
●補助率 対象経費の2分の1(最大100万円)
●条件 初期負担額のうち、10%以上かつ10者以上は寄付によること。設置後5年間、施設と連携して環境活動を行うこと。
つまり、補助対象団体が公益的施設を借りて市民共同発電を設置する場合、年2件ですが100万円を限度に設置経費の2分の1を補助するというもので、この制度によって平成28年度には豊中市と吹田市に、29年度は高槻市と八尾市に、そして、30年度には箕面市と西淀川区に市民共同発電所がつくられ、それぞれ太陽光発電事業を始めるとともに、園児や地域の人たちの中に環境と自然エネルギー・再生可能エネルギーについて理解を深める活動を行っています。
また、補助対象団体は、パネル設置施設への売電あるいは余剰電力の電力会社への売電による収入を原資にして、施設への賃借料の支払い、出資者への元本・利息の返済、運営費の捻出などを行っています。
市民共同発電所(市民や地域が主体になって共同で自然エネルギー・再生可能エネルギーによる発電施設を設置し、運営を行う取り組み)は全国では既に1000件を超えています。そうした中で大阪の到達点はまだ10件足らずであり、こうした状況を飛躍させるうえで大阪府の府民共同発電補助事業は積極的な役割を果たしており、原発ゼロの会・大阪としてもこの制度の活用を広くよびかけています。既に何カ所からは「ぜひやってみたい」「ウチの地域でも検討しよう」との声が上がっています。
ところが大阪府は、この補助金制度が発足してまだ3年しか経っていないのに、早くも廃止しようとしています。具体的には太陽光パネルと設置費用を無償提供するという民間企業が現れたとして、その企業の提案を受け入れて次のような制度に変更するというものです。
①これまで府が直接行ってきた府民共同発電所づくりの事業を、太陽光パネルと設置費用を無償で提供するという民間企業に任せ、府はこの制度の広報・周知と実績をホームページで紹介する活動に徹する。また、これを機会に府が行ってきた年2件・1件当たり最大100万円まで補助するという補助金制度は廃止する。
②現行の制度では、府民共同発電所の設置者は、発電された電力を太陽光パネルを設置させてもらっている施設に提供・売電し、また、電力会社の送配電線に系統連系し余剰電力を電力会社に売電してきた。しかし、新しい制度では売電なしの自家消費のみとされ、従って、送配電線に系統接続して余剰電力を電力会社に売電することは出来なくなった。
③府民共同発電所を作ろうとする補助対象団体は、これまで大阪府の担当者と事前協議を行い、その決定を受けて設置し、活動報告書も府に提出してきた。しかし今後は「設置についての事前協議」「設置対象施設の選定」「発電設備の設置」は全てこの民間企業が行い、「活動実績報告書の提出」もこの民間企業に対して行うシステムに変更される。
④これまで年2件のペースで進めてきた府民共同発電所づくりも、今後は年に1~2件になる見込みである。
現在、このシステムに手をあげ受注しようとしている民間企業は、パネルと設置費の無償提供を大阪府の「公民連携」部門に提案した会社で、東京と大阪に本店を構え、北は北海道から南は九州まで6つの支店を持って太陽光発電システムの販売・施工・メンテナンス、電力小売事業、再生可能エネルギーの発電事業とファンド組成募集事業などを事業内容に全国展開を目ざし、進めている会社です。
この新制度には、いくつもの問題点があります。
第1は、私たちは一民間企業が企業の社会的責任(CSR)の一環として、太陽光パネルとその設置費を無償提供し、太陽光発電事業を広める取り組みを独自に行うというなら、それをとやかく言うものではありません。しかし、民間企業が自治体の事業に食い込むために資材と設置費を無償提供しようとしているのであるなら、話は全然違ってきます。無償提供を突破口に自治体の事業に食い込み、事業拡大を図っていくという企業戦略の一環として進められているものであるなら、それは正に企業による自治体事業の取り込みであり、行政と企業の癒着の始まりです。また、こうした提案を受けて行政がすべき事業を民間企業に丸投げし、行政がしてきた事業を廃止するなら、それは行政の責任放棄であり、施策の大きな後退です。
第2は、発電する電気について、「売電せず、自家消費のみにする」と使い道を限定していることの問題です。自家消費のみに限定されるなら、それは系統連系しない発電となり、余剰電力は全て捨てることになります。そもそも市民共同発電所を含めて自然エネルギーによる発電は、発電量に大小関係なく、地域の電力は地域の発電で賄っていこうという要求からの運動です。自家消費のみとして使用するか、系統連系して余剰電力を売電までするかは、事業主体の判断にゆだねられるべきことです。
第3は、設置についての事前相談や設置対象施設の選定、発電設備の設置などは全て民間企業が行い、活動実績の報告も民間企業に対して行うことも問題です。これでは正に公的事業の民間企業への丸投げであり、大阪府の責任放棄と言わざるを得ません。
第4に、私たちは自然エネルギー・再生可能エネルギーの推進は「地産地消」「小規模分散」「地域経済の活性化」そのためにも「住民参加」が大事だと考えています。この事業を受注しようとしている民間企業は、太陽光発電事業の販売・施工・メンテを主業務に全国展開を目指している企業です。こうした企業に丸投げするなら大阪の経済を支えている地域の中小業者は埒外に置かれ、結局は大阪府はその企業の事業拡大の片棒を担ぐだけということになります。
私たちは、民間企業がCSRの一環として太陽光発電のパネルと設置費を無償で提供するという事業を独自活動として取り組むことをとやかく言うものではありません。しかし、その設備と施工費の“無償提供”が自治体の事業に食い込み、事業拡大を測るための戦略で、また、それを口実に府が行ってきた補助金事業を廃止することには断固反対します。
大阪府と大阪市は、「2020年までに150万kW(年間発電量として約31億kWh)の電力を創出する」という自然エルルギー・再生可能エネルギー拡大の方針を持っています。31億kWhとは大阪の消費電力のわずか5%足らずです。国ですら2030年度までに自然エネ・再エネ比率を22~24%にするという目標を掲げている情勢です。大阪府は掲げた目標を達成するとともに、それを30%、40%にまで急速に高めていく責任を負っています。
そのために行政、府民、企業が総力をあげて取り組むことが必要であることは言うまでもありませんが、しかし、そのことと“公民連携”の名のもとに自治体の事業を民間企業に丸投げするなどと言うこととは全く別問題です。自治体事業の運用は公正で民主的、透明性の高いものでなければなりません。
自然エネルギー・再生可能エネルギーを大きく推進しようとすれば、その事業が経済的にも成り立ち、地域経済の活性化につながる循環型システムにしていくことが大切です。そのために、初期費用に一定の補助・助成を行い、事業を立上げ、定着させていくことは行政の大きな役割です。既に国の電力の40%以上を自然エネルギーで賄うまでになっているドイツの先進的な経験から学ぶべき教訓もそこにあります。
私たちは大阪府の府民共同発電補助事業の民間企業への丸投げと補助金制度の廃止に断固反対します。私たちは大阪府と各自治体に対して、自然エネルギー・再生可能エネルギー推進に本腰を入れて取り組むことを強く要求します。
以上