私たちの見解

おおさかエネルギー地産地消推進プランに責任を持つ府として
「府民共同発電補助事業」の復活と継続を求める

2019年5月9日
原発ゼロの会・大阪

 大阪府は本年3月29日に株式会社エコスタイルと「協定」を結び、4月4日、「公民連携による『太陽光発電設備の設置による地域環境活動の推進』について」と題して、その内容をホームページに掲載し、発表しました。その中心は、これまで大阪府の事業として推進してきた府民共同発電所づくりの取り組みを、エコスタイルという一民間企業に丸投げすると同時に、府民共同発電所づくりに積極的な役割を果たしてきた「府民共同発電補助事業」を廃止し、補助制度を廃止するというものです。

 私たち原発ゼロの会・大阪(正式名称=原発をなくし、自然エネルギーを推進する大阪連絡会)は、この民間企業への丸投げ・補助制度の打ち切りは、脱原発・脱炭素・自然エネルギー100%の社会づくりが求められている情勢にあって、行政の責任放棄、制度の大きな後退であり、反対の意を表明するとともに、「推進プラン」の推進に責任を持つ大阪府として「府民共同発電補助事業」の復活と継続を要求します。

 (1)大阪府の府民共同発電補助事業とは

 この事業は、大阪府の「おおさかエネルギー地産地消推進プラン」で掲げられている再生可能エネルギーを推進する取り組みの一つで、平成28年度(2016年)から始まった補助金事業です。その主な内容は以下のようになっています。

 即ち補助対象団体が公益的施設を借りて市民共同発電を設置する場合、年2件ですが100万円を限度に設置経費の2分の1を補助するというもので、この制度によって平成28年度には豊中市と吹田市に、29年度は高槻市と八尾市に、そして、30年度には箕面市と西淀川区に市民共同発電所がつくられ、それぞれ太陽光発電事業を始めるとともに、園児や地域の人たちの中に環境と自然エネルギー・再生可能エネルギーについて理解を深める活動を行っています。

 また、補助対象団体は、パネル設置施設への売電あるいは余剰電力の電力会社への売電による収入を原資にして、施設への賃借料の支払い、出資者への元本・利息の返済、運営費の捻出などを行っています。

 市民共同発電所(市民や地域が主体になって共同で自然エネルギー・再生可能エネルギーによる発電施設を設置し、運営を行う取り組み)は全国では既に1000件を超えています。そうした中で大阪の到達点はまだ10件足らずであり、こうした状況を飛躍させるうえで大阪府の府民共同発電補助事業は積極的な役割を果たしており、原発ゼロの会・大阪としてもこの制度の活用を広くよびかけてきました。既に何カ所からは「ぜひやってみたい」「ウチの地域でも検討しよう」との声が上がっています。

(2)大阪府は2019年度からこの補助制度を廃止

 ところが大阪府は、発足してまだ3年しか経っていないこの補助金制度を、2019年度予算で補助金をゼロにし、廃止してしまいした。ホームページでの「実施概要」およびエコスタイルとの協定を総合すれば、新しい制度の内容は次のようなものです。

  1. これまで府が直接行ってきた府民共同発電所づくりの事業は、太陽光パネルと設置費用を無償で提供するというエコスタイルに任せ、府はこの制度の広報・周知と実績をホームページで紹介する活動に徹する。
  2. 共同発電所の設置者は、発電した電力を設置施設や電力会社に売電し、それを原資に出資金の元本・利息などの返済に充てて来た。しかし、新しい制度では、発電した電力は設置施設でのみ用いることとし、余剰電力の売電はしないことになった。
  3. 共同発電所の設置者は、これまで大阪府の担当者と事前協議を行い、その決定を受けて設置し、活動報告書も府に提出してきた。しかし今後は設置についての可否、発電設備の仕様、施工、設置後の保守管理などはエコスタイルが行い、また、実施する環境活動の報告もエコスタイルに対して行う。
  4. 共同発電所の設置者は、その発電設備がエコスタイルから無償提供されたものであることを設置施設の公衆の見やすい場所に表示する。

 この制度を提案・受注したエコスタイルという会社は、インターネットで公開されている会社概要を見ると、設立2004年10月5日、資本金6億500万円、従業員362人(2019年3月1日現在)、東京と大阪に本店を構え、北は北海道から南は九州まで6つの支店を持ち、太陽光発電システムの販売・施工・メンテナンス、電力小売事業、再生可能エネルギーの発電事業とファンド組成募集事業などを事業内容にしている会社です。

(3)新制度の重大な問題点

 私たちはこの新制度には、次のような問題点があると考えています。

 第1は、一民間企業が企業の社会的責任(CSR)の一環として、太陽光パネルとその設置費を無償提供し、太陽光発電事業を広げるというなら、私たちはそれをとやかく言うものではありません。しかし、行政が事業を民間企業に丸投げし、それと引き換えに行政がしてきた事業を廃止するなら、それは行政の責任放棄であり、施策の大きな後退と言わざるを得ません。

 第2は、発電した電気について、余剰電力があっても売電せず、設置施設でのみ用いる(自家消費)と使い道を限定していることの問題です。自家消費のみに限定されるなら、それは系統連系しない発電となり、余剰電力は全て捨てることになります。そもそも市民共同発電所を含めて自然エネルギーによる発電は、発電量に大小関係なく、地域の電力は地域の発電で賄っていこうという発想からの運動です。自家消費のみとして使用するか、系統連系して余剰電力を売電までするかは、事業主体の判断にゆだねられるべきことです。

 第3は、設置についての事前相談や設置対象施設の選定、発電設備の設置などは全てエコスタイルが行い、また、活動実績の報告も民間企業に対して行うことの問題です。これでは正に公的事業の民間企業への丸投げそのものであり、大阪府の自然エネルギー推進への責任放棄と言わざるを得ません。府の仕事は、事業主の公募と事業報告のホームページへの掲載だけとなり、人員もほとんど要らない業務に縮小されます。

 第4は、自然エネルギー・再生可能エネルギーの推進は、「地域経済の活性化」も重要なファクターです。市民共同発電の事業を全国展開をめざす企業に丸投げするなら、大阪の経済を支えている大阪の中小業者は埒外に置かれ、結果として、地場産業の育成や大阪経済の回復に寄与するものとはなりにくいものになってしまいます。

(4)私たちの考え方と要求

 既に国の電力の40%以上を自然エネルギーで賄うまでになっているドイツから学ぶべき教訓の一つは、行政の援助と制度づくりで、自然エネルギー推進の事業が経済的にも成り立ち、地域経済の活性化につながる循環型社会を構築していることです。初期費用に一定の補助・助成を行い、事業を立上げ、定着させ、もって自然エネルギーを大きく推進することは、行政の役割であり責任です。

 大阪府と大阪市は、「おおさかエネルギー地産地消推進プラン」で、2020年までに150万kW(年間発電量として約31億kWh)の電力を創出するという自然エネルギー・再生可能エネルギー拡大の方針を持っています。年間発電量の31億kWhとは大阪の年間消費電力のわずか5%足らずです。国ですら2030年度までに自然エネ・再エネ比率を22~24%にするという目標を掲げている情勢にあって余りにも低い目標です。大阪府は掲げた目標を達成するとともに、それを30%、40%にまで急速に引き上げる責任を負っていると考えます。

 私たちはそういう立場から大阪府に対し、以下のことを要求します。

  1. 大阪府の府民共同発電事業の民間企業への丸投げを止めること。
  2. 大阪府の「府民共同発電補助事業」を復活し、継続すること。
  3. 大阪府は自然エネルギー・再生可能エネルギーの目標に見合う人と予算を確保し、本腰を入れて取り組むこと。

以上