2021年3月25日

内閣総理大臣 菅 義偉 殿
経済産業大臣 梶山弘志 殿
環境大臣   小泉進次郎 殿
資源エネルギー庁長官 保坂 伸 殿 
総合資源エネルギー調査会基本政策分科会長 白石 隆 殿

原発をなくし、自然エネルギーを推進する
大阪連絡会(略称:原発ゼロの会・大阪)
大阪市中央区内本町2-1-19 内本町松屋ビル10 370号
大阪から公害をなくす会気付

国の「エネルギー基本計画」は、文字通り自然エネルギー、
再生可能エネルギーを主要な電源にする計画にすること
~次期「エネルギー基本計画」についての私たちの意見・要望~

 2011年3月に福島第1原発の事故が発生してから10年が経ちました。

 わたしたちは、この原発事故を契機に原発とエネルギー問題について、真剣に考えるようになりました。そして、そこから学んだことの一つは、国の「エネルギー基本計画」が国のあり方まで決める大事なものであるということでした。

 2018年7月の閣議決定された国の「第5次エネルギー基本計画」の後継として、第6次「エネルギー基本計画」についての審議が始まっています。エネルギー基本計画の改定について、昨年10月に発表された「エネルギー基本計画の見直しに向けて」(以下『見直しに向けて』と略す)を中心に意見と要望をまとめ提出します。ご審議、ご検討宜しくお願いします。

(1)「第6次エネルギー基本計画」をめぐる情勢について

 総合資源エネルギー調査会基本政策分科会に提出され『見直しに向けて』で述べられている情勢論については、次のような欠陥があり、補強すべきです。

1)原発・エネルギー問題をめぐる世界の情勢について

 『見直しに向けて』での世界の情勢論は、もっぱら「自国第1主義の台頭」「新型コロナによるグローバルサプライチェーンの分断」「中東情勢の緊迫化。先行き見通しの不透明」などが列挙され、「自国調達能力の強化」が強調されています(3ページ)。また、4ページでは「気候変動問題への危機感の高まり」「新たなテクノロジーの台頭」などが記述されています。

 しかし、この間の最大の出来事は、リトアニア、ベトナム、トルコ、イギリスなどが原発建設計画から撤退したように、“脱原発”が決定的な流れになっていることであり、同時に自然エネルギー・再生可能エネルギーの普及拡大が飛躍的に進んでいることです。また、もう一つの特徴は、気候変動・異常気象の原因となる温室効果ガス・CO2の削減が喫緊の課題として共有され、フランス=2022年、イギリス=2024年、イタリア=2025年、ドイツ=2038年など、期限を切った石炭火力発電所の廃止、即ち脱石炭火力・脱炭素の動きが広がっていることです。

 従って、世界の情勢には、こうした脱原発、脱石炭火力・脱炭素、自然エネルギー・再生可能エネルギーの普及拡大が、大きな流れになっていることを銘記すべきです。

2)事故を起こした福島第一原発の現状について

 『見直しに向けて』では8~11ページで「原子力災害からの福島の復興」というタイトルをつけて福島の現状が述べられています。その内容は、「構内の放射線量の大幅な減少」「廃炉に向けた作業は着実に進捗」「帰還困難区域を除く全ての地域の避難指示を解除」「3号機でプール燃料取り出しが進捗」「1・2号排気筒の解体作業が完了」など、福島第1原発の廃炉作業と福島の復興が全て順調に進んでいるようなバラ色にかかれ描かれています。

 しかし、福島の現状はまったく逆であることは誰の目にも明白です。あの事故から10年経った今日でも8万人を超える人が故郷からの避難を強いられています。こんなことは国民がいまだかつて経験したことのないことです。事故を起こした原発からの汚染水は“アンダーコントロール”されているどころか、毎日増え続けも処理方法も確定できない状況にあります。あの事故による放射能で汚染された土壌を削って集めた汚染土は山と積まれたままで、行き場を失っています。原発の廃炉についても「40年」が言われていますが、まだ燃料デブリの実態すらつかめておらず、どう取り出すかも決められない状況です。また、デブリを取り出して後、それをどう保管するかも全く示せていません。何よりも福島第一原発の事故の真相は今もって未解明のままでです。“40年で廃炉”など不可能で、長期の膨大な費用のかかる難作業になっています。

 第6次エネルギー基本計画では、こうした福島原発事故後の福島の実態をリアルに描くべきです。

3)原子力発電所そのものについて

 『見直しに向けて』14ページの「(参考)エネルギーミックス」の「3E+Sの同時実現」の項では、温室効果ガス排出量の削減として、原子力発電と再生可能エネルギーが「非化石」電源として一緒にされ、また、15ページの「ミックスの進捗」の項ではゼロエミッション電源(=温室効果ガス排出ゼロの電源)としてここでも両者を一緒に位置づけ、再エネ22~24%、原子力22~20%を割り当てています。即ち、原子力発電も“CO2を出さないクリーンな電源”として必要だという書き方です。

 しかし、「自然エネルギー・再生可能エネルギー」と「原子力」をゼロエミッション電源として同列視することはまったくの誤りです。何故なら、原発の稼働は必然的に高濃度放射性廃棄物を生み出し、その強い放射線量は人の生命を脅かします。後世の人はそんな何の使用価値もないものを、10万年以上も管理し続けなければなりません。また、原発がいったん事故を起こせば、放射性物質が大量に放出され、チェルノブイリと福島第1原発の事故が示すように“広範囲に”かつ“長期に”わたって人の住めない地域をつくり出してしまいます。確実に後世の人たちに「負の遺産」を残す原発を、ゼロエミッション電源と喧伝して残そうとするやり方は、まやかしであり絶対許されないことです。

 原発は、既に各国がその建設から撤退しているように、コスト面からみても成り立たない電源で、“斜陽産業”になっています。日本が原発推進の論拠にしてきた「核燃料サイクル」構想も高速増殖炉もんじゅの廃炉決定、六ケ所村の核燃料再処理工場の相次ぐ営業開始の延期に見られるように、完全に破綻しています。加えて頻繁に起こる巨大地震や津波、火山の爆発、大型の台風や竜巻の発生など日本の立地、最近の異常気象などを考えれば、原発は余りにも危険な電源で、人々の安全と共存できるものではありません。

 従って、第6次「エネルギー基本計画」は、原子力発電から完全に撤退することを銘記する内容にすべきです。

(2)第6次エネルギー基本計画へのわれわれの意見・要望

 先に述べたような情勢認識を踏まえたうえで、従って、私たち原発ゼロの会・大阪は、次期「エネルギー基本計画」は、脱原発・脱石炭火力と、文字通り“自然エネルギー・再生可能エネルギーを主要な電源”とする「エネルギー基本計画」とすることを強く求めます。

 その上で次のような意見と要望を、第6次エネルギー基本計画の策定に対して提出します。

  1. エネルギー基本計画は、国のあり方にかかわる重要な課題であり、経産省の考えを基に“学識経験者”の意見を聞いて、後は閣議決定で済ますという従来のやり方を改め、国民の意見を聞くとともに国会できっちり議論し、決定すること。
  2. エネルギーのあり方について、発電等によるエネルギーの創出、省エネ・効率化等によるエネルギー消費の削減とともに、無駄にエネルギーを消費しない社会への転換も大きな柱として位置づけること。
  3. もはや核燃料サイクル構想は完全に破綻しており、次期エネルギー基本計画では、核燃料サイクル構想や原発ベースロード電源論から完全に撤退し、原発はゼロにするエネルギー政策にすること。
  4. 2050年カーボンニュートラルを実現するために、石炭火力発電所の建設計画は全て中止とし、現在ある石炭火力発電所も順次廃止する政策にすること。
  5. カーボンニュートラル、自然エネ・再エネ100%の日本を実現するために、自然エネ・再エネを主要な電源に位置づけ、2030年度までの普及目標を、第5次「エネルギー基本計画」の2030年目標22~24%の倍以上、最低50%以上を目標とするエネルギー計画にすること。
  6. 自然エネルギー・再生可能エネルギーは、自然を破壊し、住民の安全と健康を脅かす巨大開発型を止めて、地産地消・小規模分散・住民参加型を原則にすすめることを盛り込むこと。
  7. 送配電線網は、電力会社から完全に独立した事業体にし、国の責任で確立・維持すること。また、電力の融通が日本全土で迅速に出来るようにするため、地域間の送配電容量のアップ、さらには50Hz・60Hz問題の解消に取り組むこと。
  8. 大手電力が電力の供給を制限したり、電力のひっ迫が喧伝されて需要が集中したりすると、電力の仕入れ単価が青天井に上昇してしまう現在の「卸電力取引所」制度を改善すること。仕入れ単価の上限200円は大幅に引き下げること。
  9. 老朽原発や石炭火力発電所の維持費を新電力・市民電力などにも負担させる「容量市場」は廃止すること。
  10. 今後増加が予想される太陽光パネル等の廃棄について早期にルールを確立すること。

以上