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松井市長・吉村知事の「原発汚染処理水の大阪湾放出 容認」発言に断固抗議し、撤回を求める声明 [2019.9.28]

松井市長・吉村知事の「原発汚染処理水の大阪湾放出
容認」発言に断固抗議し、撤回を求める声明

2019年9月27日
原発ゼロの会・大阪

 松井一郎大阪市長は9月17日、東京電力福島第一原発から出る放射性物質トリチウムを含んだ汚染処理水(以下、汚染水)について、「科学的根拠があり、自然界レベルと比べて全く影響がないなら、政治家が(受け入れを)決断すべきことだ」と述べた。国が無害であるという根拠を示せば、大阪湾への放出を認めるというのである。吉村洋文大阪府知事も同日の定例記者会見で「放出となれば府として協力する」という同様の考えを明らかにした。

 トリチウムとは三重水素と呼ばれ、化学的性質は水素と同じである。トリチウムは原子核に1個の陽子と2個の中性子を含んでいるために不安定な物質で、常に中性子が電子を放出して新しい元素、ヘリウムに変換して安定化する。この時放出されるのがベータ線である。従って、トリチウムは放射性物質が人体に対して持つ共通の危険性を持つ。同時に、水素同様に水の中に混じり、体内に入ると細胞の染色体が壊される。母親の胎盤がトリチウム水と普通の水とを区別できず、胎児に取り込んでしまため、先天異常や死産・流産などが起こることが指摘されている。トリチウムの半減期は12.3年であり、放射能レベルが100分の1以下になるまでには80年近くかかる物質である。加えて福島第一原発の汚染水には、トリチウム以外にもストロンチウム90など様々な放射性物質が基準値を上回るレベルで残っていることも判明している。

 私たちは、松井市長ならびに吉村知事の「原発汚染水の大阪湾放出容認」発言に対して、以下の点から断固抗議するとともに、発言の撤回を求めるものである。

 第1に、トリチウム汚染水が、もし「自然界レベルと比べて全く影響がない」「無害」のレベルまで放射能レベルが低下したこと、それが「科学的根拠」をもって示されるなら、何も大阪湾に放出する必要はなく、日本全国どこにでも放出してよいことになる。しかし、そうなるには長い年月を必要とし、現在はそのような段階では全くない。そんなトリチウム汚染水を大阪湾に放出してもよいなどというのは、大阪府民さらには瀬戸内住民全体を無視した全くの暴論である。国の“無害”宣言などは政治的判断によるもので全くあてにならないことは、この間の「汚染水アンダーコントロール」発言一つとっても明らかである。福島第一原発汚染水の処理については、冷静かつ科学的検討による判断が求められる。

 第2に、福島県の漁民が海洋放出に強く反対しているのは、そうしたトリチウムを含む汚染水が安全なレベルに達していないのに海洋放出されれば、魚は捕れても全然売れなくなり、漁業が成り立たなくなることが明らかであるからである。そんな汚染水を大阪湾に放出するならば(松井市長らは“全く影響がない”、“無害である”と前提条件をつけているが)、漁業を生業としている大阪湾の人たち、さらには瀬戸内海全域の人たちの生業を奪うことになる。漁業だけでなく釣りや海水浴など、大阪湾、瀬戸内海の資源を生かして生計を立てたり、生活の一部にしている人たちのくらしを奪うことになる。

 第3に、福島第一原発の汚染水問題の最大の責任は東京電力と国にある。この二者は汚染水対策について“これ以上の貯水は難しい”“経営を圧迫する”などの口実を並べて、責任逃れに終始している。そんな状況の下で汚染水の大阪湾放出を容認する発言をすることは、両者の責任を免罪することになる。いったん事故を起せば福島第一原発の事故が日々実証しているように大惨事となる原発、また、事故を起さなくても処理方法がない放射性廃棄物を生み出す原発の延命に手を貸すことになる。“政治的決断”を言うなら、住民の生命と生活・くらしを守るべき首長として、福島第一原発の事故を教訓にし、原発推進路線から完全に撤退し、自然エネルギー・再生可能エネルギーの方向に国と地方のエネルギー政策を抜本的に転換することである。

 第4に、福島第一原発の汚染水問題が深刻であることは間違いない。半減期が12.3年というトリチウムの物質的特性を踏まえて、低レベルになるまで保管し、そののち放出するのも一つの方法である。そうした方法なども含めて解決策を検討し、汚染水や汚染土、廃炉に伴う廃棄物の処理問題などについて、国内外の総力を結集して検討し、実行すべきである。地層処理で放射性廃棄物を何万年も管理するというなら、100年の管理などごく短期間のことである。それが出来ないと言うなら、原発は正に廃棄し、撤退する以外にない。

 最後に、今回の松井市長、吉村知事の発言は、福島第一原発の汚染水が、あたかも今でも放出することが可能かのごとき印象を発信しており、府民・国民に間違った情報を伝える重大な問題である。東電と国が望む“海洋放出”の呼び水になりかねない発言である。もう一つは、瀬戸内海環境保全特別措置法でも述べられているように、大阪湾・瀬戸内海は漁業資源の宝庫であるだけでなく貴重な自然景観と文化的景観を有し、関係府県はその環境の保全に全力をあげることが求められている。そのような立場にある首長が、“原発汚染水の大阪湾放出”を容認するなどと発言することは、例え前提条件を付けたとしても絶対許されることではない。

 以上、われわれは、今回の松井市長、吉村知事の発言に強く抗議するとともに、発言の撤回を求めるものである。

以上

原発をなくし、自然エルルギーを推進する
大阪連絡会(略称:原発ゼロの会・大阪)

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